うつ病とは
うつ病は、決して珍しい病気ではなく、日本人では一生のうち男性の約4%、女性の約7%に診られる病気と言われています。特に、若い働き世代に多く、男性と女性では女性に多い病気とされています。また、自殺の要因としてうつ病があることもあり、適切な治療をすることが求められます。気分がさえない、何もやる気が起きないなど、気になる症状がありましたら、お早めに当院までご相談ください。
うつ病チェックシート
うつ病につながる「こころ」と「からだ」の健康状態をチェックしていきます。簡単な質問紙にチェックしていただくだけで確認できますので、定期的にご自身の「こころ」と「からだ」の状態をチェックしてみましょう。
うつ病の原因
うつ病の原因は、未だはっきり解明されておりません。しかし、何らかのストレスや脳の神経物質が関わっていると考えられています。
ストレスとしては、身近な人の死や失職など悲しいことだけでなく、引っ越しや結婚、昇進など、あらゆる感情の揺さぶりがストレスの要因になるとされています。
一方、脳の神経物質としては、セロトニンやノルアドレナリンという神経伝達物質が関与しているとされています。セロトニンやノルアドレナリンは、意欲や気分、記憶など感情に関わる情報のコントロールをしており、このバランスに不調が起きることで、心身のバランスも崩れると考えられています。
うつ病にかかりやすい人
うつ病は、はっきり解明された原因のない病気ですが、かかりやすい(なりやすい)性格があるとされています。「メランコリー親和型」とよばれる一般的にルールや秩序に誠実で真面目、仕事熱心である、責任感が強いなどといった性格を持つ方がかかりやすいとされています。こうした方々は、いわゆる社会的に評価の高い傾向にある一方、真面目さゆえに自分自身を追い込んでしまいがちという特徴があります。
なお、近年若者に多く見られる「新型うつ病」や「非定型うつ病」と呼ばれる新しいタイプのうつ病は、「メランコリー親和型」と異なり「ディスチミア親和型」とされています。夕方から夜にかけて抑うつ発作がみられる一方、楽しいことなどには抑うつ症状があらわれない、気分反応性がみられるのが特徴です。また、ルールなどに誠実で仕事熱心であるメランコリー親和型と異なり、ルールに対してストレスを感じやすく、もともと仕事熱心でない、会費傾向や漠然とした万能感を持つなどの特徴があります。
このように、うつ病にはかかりやすいとされる性格や従来と異なるタイプがあり、専門的な医師が的確に診断し、それぞれに応じた治療をしていく必要があります。当院でも、専門的な治療が可能です。ご自身やご家族が悩まれていましたら、お気軽にご相談ください。
うつ病の症状
心の症状
- 意欲(気力)がない
- ほぼ1日中、毎日のように気分が落ち込む
- 今まで楽しめたことが楽しめない
- 焦りを感じる
- とてつもない不安を感じる
- 自分がどうしようもない人間に感じる(自分自身に価値を感じない)
- 物事に集中できない
- 死に関して考えることが増えた
など
身体の症状
- 睡眠障害(不眠・過眠)
- 食欲低下
- 体重減少
- 疲労感(倦怠感)
- 性欲がない
- 動悸
- 息苦しい
- 口が乾く
- 便秘
- 下痢
- 頭痛
- 肩こり
など
家族が気付く変化
- 飲酒量が増える
- 休日も外出せず、行動する気が起きない
- 暗い表情で、活気がない
- 頭痛や肩こりなど体調不良の訴えが多くなる
- 仕事や家事、学業の能率が低下した
- 仕事や家事、学業でミスが増えた
- 周囲との交流を避けるようになった
- 遅刻や早退、欠席が増加した
- 以前好きだった趣味やスポーツができない
など
職場の人が気付く変化
- 活気がなくなった
- 口数が少なくなった
- 冗談を言ったり笑ったりしなくなった
- 会議などで発言しなくなった
- 休暇や欠勤が目立つようになった
- 昼食をあまり食べなくなった
- 集中力がなく、ミスが増えた
- まとまった相手に伝わる話ができなくなった
- よくため息をつくようになった
- 弱気な発言が目立つようになった
- 自信をなくした感じがする
など
うつ病の治療
うつ病は、十分な休養のほか、薬物療法や心理療法、修正型電気けいれん療法(mECT)による治療を行うことがあります。当院では、専門的な知識を持つ医師が患者様に応じた治療をご提案します。
休養
心身の十分な休養がとれるよう環境を整えましょう。職場や学校から距離を置いた自宅にて休養を取ることで心身の休息を図ります。また、入院という保護的な環境下でゆっくりと心を癒すのも一つの選択肢です。自殺や重症化、慢性化を防ぎます。
薬物療法
うつ病患者様においては、神経伝達物質のバランスが崩れている場合もございます。薬による治療に抵抗のある方もいらっしゃるかと思いますが、当院では必要に応じて適量の投薬治療を行うことがございます。
神経伝達物質のバランスを整える薬は、抗うつ薬と呼ばれるもので、服用後2週間程度した後、効果があらわれます。即効性がないため、薬物治療に懐疑的になることもあるかと思いますが、専門の医師が患者様に応じた治療内容をご提案していますので、焦らずゆっくりと治療していただくことが大切です。
SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)
感情のコントロールを行い、精神を安定させる役割のあるセロトニンの働きを強めます。セロトニンだけに選択的に作用するため、抗うつ薬として最も多く使用されている抗うつ薬です。お薬を飲み始めの1週間は食欲低下や嘔気が見られることもありますが、以後は徐々に改善が認められます。
SNRI(セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
感情のコントロールを担う痛みを和らげる効果も持ち合わせています。お薬の飲み始めの1週間は食欲低下や嘔気が見られることもありますが、以後は徐々に改善が認められます。
NaSSA(ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬)
SSRIやSNRIと異なる作用機序で、セロトニンやノルアドレナリンの放出を促進させます。服用開始後、短時間で効果が出る点も特徴です。
三環系・四環系抗うつ薬
抗うつ薬の中で、初期に開発されたタイプの薬です。錠剤による内服タイプのものだけでなく、点滴タイプのものもある点が特徴です。SSRIやSNRI同様に、セロトニンやノルアドレナリンの濃度を高めます。効果はありますが、SSRIやSNRIと比較して副作用がやや多い点も指摘されています。
心理療法
うつ病における心理療法においては、認知行動療法を中心に行っていきます。認知行動療法では、「認知」という自信の考え方の癖に気づき、柔軟な思考を知り、問題解決をするための行動をしていく心理療法です。当院では、認知行動療法を専門的に学んだスタッフが、考え方の癖から患者様自身で対処できる方法、柔軟な思考を考えていきます。
復職支援プログラム(リワークデイケア)
当院では、うつ病によるメンタル不調から休職されている方に対して、職場復帰を目標とした復職支援プログラム(リワークデイケア)を行っております。リワークデイケアでは、心身・健康の回復のためにヨガやウォーキング、アロマを取り入れており、認知行動療法やグループワークを通じてストレス対処のための方法を学んでいきます。また、復職に当たり必要となる能力を習得できるように訓練していきます。ご不明点等ございましたら、お気軽にご相談ください。
修正型電気けいれん療法(mECT)
薬物療法で効果を確認できない、あるいは自殺の危険性が切迫している、食事がとれないなどの緊急を要する場面において、迅速な治療効果のある修正型電気けいれん療法(mECT)を行うことがあります。治療に際しては、麻酔科医による適切な管理が必要であり、当院でも専門家のもと治療を行っております。