修正型電気けいれん療法(m-ECT)について
mECTとは、修正型電気けいれん療法(mECT:modified Electro Convulsive Therapy)を略したものであり、1943年、ハンガリーの精神科医が統合失調症の患者に対して初めて行った治療法です。以後、この治療はその有効性から長年施行され続け、安全性の面でも改良され続けています。現在では、全身麻酔下で、サイマトロンという高度管理医療機器として使用して頭部を約8秒間電気刺激して、脳の機能回復を促す治療法をとっています。薬物療法や心理療法と比較して、有効性が高く、効果が早くあらわれることが特徴です。
人為的にけいれん発作を起こし、脳機能の回復を図りますが、全身の筋肉を緩める薬(筋弛緩薬)も使用し、実際には身体のけいれん発作を最小限に抑えます。
当院では、治療を週2回のペースで、1クール8回から12回の通電を行います。ただし、通電回数は、患者様により異なり、その都度精神科医が専門的な視点で有効性を判断します。ご不明点等ございましたら、お気軽にご相談ください。
適用となる方
- 自殺の危険や身体的に重篤で、迅速かつ確実な改善が必要な方
- 薬剤の副作用が出やすく、十分な薬物療法ができない方
- 十分な薬物療法を行っても改善がみられない方
- 昏迷状態(極度に緊張や困惑が強く、意思疎通が取れない状態)で、食事などの摂取ができず早急な改善を要する方
- 以前に修正型電気けいれん療法(mECT)を行い有効だった方
- 患者様の希望
など
適用となる疾患
- うつ病
- 双極性障害(躁うつ病)
- 統合失調症
- パーキンソン病
- 慢性疼痛
- 緊張病
など
頻度・回数
当院では、1週間に2回行い、これを3~6週間繰り返します。施行回数4~5回目で改善がみられることもあります。個人差はありますが、6~12回の施行が必要になることが多いです。この6~12回を1クールとして、治療を行っていきます。12回施行しても効果が見られない場合、修正型電気けいれん療法は無効と判断し、治療法の切り替えを検討します。
治療開始までの流れ
1.医師による判断
診察を行った医師が症状や既往歴などを考慮し、修正型電気けいれん療法の適応となるか判断していきます。
医師が治療適応と判断する方
- 統合失調症による幻覚妄想が他の治療法にて改善がみられない方
- 著しい興奮、緊張状態にある方
- 重度のうつ病、双極性障害(そう状態)
- 自殺念慮のある方
- 他の薬の副作用が強い方
など
2.検査
修正型電気けいれん療法では、麻酔などを使用するため、患者様の身体状態を確認していきます。
よくある検査項目
-
血液検査
-
心電図
- 頭部CT検査
- 脳波
など
3.複数医師による判断
身体状態が修正型電気けいれん療法に耐えられると判断した場合、さらに他の医師による意見を伺い、慎重に判断をくだしていきます。
4.同意書の記入
修正型電気けいれん療法を行うことが適切であると判断した場合、患者様とご家族様に最終的な説明を行っていきます。また、治療に際してご納得いただけましたら同意書をご記入いただきます。同意書の確認がとれましたら、入院治療に関してご説明いたします。
5.治療
入院していただいた後、修正型電気けいれん療法を開始していきます。
治療当日の流れ
- 治療前日は、午後9時以降の飲食を控え、絶食していただきます。ただし、治療開始の2時間前までは、適宜水分補給を行っていただいて構いません。
- 当日の朝、患者様の病室にて点滴を行います。
- 電気痙攣療法(ECT)治療室に移動します。
- 血圧や心電図など治療を安全に行うためのモニターを装着します。
- 通電用のシールを貼っていきます。
- 酸素吸入を開始します。
- 点滴にて麻酔薬を注入します。
※患者様は治療中眠った状態になりますので、痛みなどを感じることはございません。 - 筋肉を緩めるための薬(筋弛緩薬)を点滴にて注入していきます。
- 修正型電気けいれん療法の治療器であるサイマトロンから8秒間電気を流していきます。
- 治療が終わると徐々に目が覚めていきます。
- リカバリールームにて意識や血圧、呼吸状態などバイタルを確認し、状態を確認した上で病室へお戻りいただきます。
修正型電気けいれん療法の副作用
実施直後に現れる副作用
- 血圧上昇
- 頻脈
- 痙攣発作
- 不整脈
※血圧や脈拍に関しては、数分で自然に消失することが多いです。また、痙攣発作に関しては、筋弛緩薬を使用することで、発作を抑制していきますので、安心してください。
麻酔から覚めて現れる副作用
- 物忘れ
- 頭痛
- 筋肉痛
※麻酔薬など使用するため、治療直後はぼーっとすることがありますが、数時間または数日で改善していきます。
当院の治療実績
直近の当院の修正型電気けいれん療法治療実績になります。
治療抵抗性統合失調症の患者様をはじめ、うつ病、躁うつ病、発達障害の患者様に修正型電気けいれん療法(ECT)を行っております。2021年度は、延べ481件の修正型電気けいれん療法を行ってきました。
経験豊富な医師が治療を行って参りますので、安心してご相談ください。
人数 | 延べ | |
---|---|---|
令和4年度(2022年)ECT実績合計 | 69人 | 606 |
統合失調症 | 51人 | |
気分障害 | 16人 | |
パーキンソン病 | 1人 | |
その他 | 1人 |