日本の精神医療の課題
日本の精神医療には、入院日数の長期化や閉鎖的な環境など、諸外国と比較していくつかの特徴があります。当院では、こうした日本の精神医療に対する課題に向き合い、日本の精神医療をリードしていくという考えのもと、様々な取り組みを行っております。
入院日数の長期化
日本では、精神医療における新規入院患者が年間30万人以上、存在します。このうち、日本において精神科を含むすべての診療科にて在院日数の平均は1か月程度にあるのに対し、精神病床に限ると令和元年(2019年)時点で260日を超えるとのデータがあります。この現状は、他の先進国と比較すると異常な数値であり、日本の精神科の問題点の1つになっています。
これは単に病状の悪い(重い)方が多いということではなく、病状的には退院し、一般的な日常生活が送れる、あるいは支援することにより日常生活を送れるという状況にもかかわらず長期的な入院状態になっている方が多いという現状を示しています。
なお、こうした長期入院の原因としては、先にあげた患者様の疾患・障害による影響だけでなく、治療における課題(過剰な薬剤投与)や患者様の周辺環境、患者様と社会との関係性など多岐にわたる課題があるためとされています。
当院では、こうした日本の精神科医療の現状を踏まえた上で、スーパー救急病棟として入院患者様を3か月で退院させ、地域や社会とともに生活を送れるような支援体制を整えております。早期に退院させることを目標とするのではなく、患者様を地域や社会の一員として送り出せるように心がけております。
早期退院を地域・社会とともに、疾患に向き合いながら行えるために、関連施設としてクリニックや在宅介護支援センター、地域生活支援センターなど、多岐にわたる関連施設を埼玉県中心に各所に設けております。お住まいの場所から疾患と向き合い、地域・社会の一員として生活していく環境を整えております。
当院から日本の精神科入院や精神疾患と地域・社会の関係性を変えていく、そのような想いでスタッフ一同患者様のために最善を尽くして参ります。お気軽にご相談ください。
スーパー救急病棟
スーパー救急病棟(精神科救急入院料病棟)とは、2002年の診療報酬の改定に合わせ、設置された精神科の病棟のことです。2002年以前より精神科急性期治療病棟はありましたが、この病棟をしのぐという意味でスーパー救急病棟が設置されました。
スーパー救急病棟では、急性期の患者様の集中的な治療を行っております。精神科病棟の中でも最上位の設置基準があり、人員配置だけでなく、設備や医療水準にも厳しい基準が設けられています。以下、スーパー救急病棟の設置基準(特徴)になります。
- 年間入院患者の6割以上が非自発入院
- 入院患者の6割以上が入院から3か月以内で退院する
- 入院患者の4割以上は新規患者である
- 精神保健指定医が病棟に1人以上配置され、病院全体として5名以上配置されている
- 入院患者16人に対し、1人以上の医師が配置されている
- 入院患者10人に対し、1人以上の看護師が配置されている
- 病棟に常勤の精神保健福祉士が2人以上配置されている
- 病棟の5割以上が個室である
- 精神科救急医療体制設備事業に参加している
- 医療圏内での措置入院・緊急入院・応急入院の受け入れが原則25%以上である、または20件以上の患者を受け入れている
- 時間外や休日、深夜において1つの病棟で年間150件以上診療を行っている
- 時間外や休日、深夜において1つの病棟で年間30件以上の初診患者を診療している
- 時間外や休日、深夜において1つの病棟で年間40件以上の入院件数がある
- 時間外や休日、深夜において警察、消防、市町村、保健所などからの依頼が1つの病棟で年間8件以上ある
このような厳しい設置基準に従いながら、患者様一人ひとりに適切な治療を行う環境づくりをしております。医師や看護師だけでない多くの専門スタッフがしっかり支えられる体制を構築しております。急性期に適切な治療を行うことで、より早期に退院、地域へ戻る、社会生活を送れる状況を目指していきます。スーパー救急病棟から退院された方の支援体制も充実しております。ご不明点等ございましたら、お気軽にご相談ください。
これからの精神科救急について
日本の精神医療の課題を見た上で、これからの精神科救急(精神科入院)は、短期に集中的な入院治療を行い、地域や社会へ繋げる役割を果たすことが期待されているかと考えております。
また、患者様一人ひとりに応じた適切な医療体制、社会資源を提供することが私たち精神科医療に携わる者の使命かと考えております。
当院から日本の精神医療を変えていきたい、このような想いで日々患者様と向き合って参ります。