心的外傷後ストレス障害(PTSD)について
心的外傷後ストレス障害(Post Traumatic Stress Disorder :PTSD)は、虐待や戦争、犯罪被害、自然災害など、日常的に感じる範囲を超えた過度なストレスを受けた後に発症する病気です。命の危機を感じた体験により、強い恐怖感や無力感、悪夢を見る、戦慄(せんりつ)を感じるなど、様々な症状を来すようになります。命の危機を自らが受けた(体験した)ときだけでなく、命の危機を受けた人を見た場合もPTSDになり得ます。
PTSDの原因
PTSDの原因としては、虐待や戦争、犯罪被害、自然災害などで、日常的に感じる範囲を超えた過度なストレスを受けることが挙げられます。命の危機に関しては、自らが受けた(体験した)ときだけでなく、命の危機を受けた人を見た場合も該当すると考えられています。また、個人の体質や気質、生活環境により発症することもあるとされています。
PTSDの症状
PTSDの症状としては、強い恐怖感や無力感、悪夢を見る、戦慄(せんりつ)を感じるといったことがあります。また、原因となった出来事を思い出させるきっかけがあると、つらい記憶があたかも現在経験しているかのように鮮明に思い出す(よみがえる)「フラッシュバック」が起こることもあります。原因となった出来事、あるいは似たようなことを執拗に避ける、あるいは思い出すことにより眠れなくなる、何かに集中できなくなる、悪夢を見るといったことが起きる場合もあります。こうした症状とともに急に涙ぐむ、落ち着きがなくなる、ちょっとしたことで起こる、驚くといった症状、以前は楽しんでいた(興味を持っていたこと)を楽しめない(興味がわかない)、人に心を許せなくなったという症状があらわれることもあります。
PTSDの検査・診断
PTSDの検査・診断としては、医師による問診が中心となります。問診では、過度なストレスとなった出来事からどれくらいの期間、どのような症状が生じているのかなど、お伺いしていきます。なお、診断に関しては、似たような疾患を除外するため、必要に応じて各種検査を行っていきます。
PTSDの治療
PTSDの治療としては、過度なストレスによって生じている症状に応じた治療が中心となります。たとえば、強い不安や不眠、うつ状態に対しては抗不安薬や抗うつ薬、気分安定薬の使用が検討されます。
急性ストレス障害について
急性ストレス障害とは、強い精神的ストレスを受けた、あるいは強烈なショックを受けた後に一過性に生じる精神疾患です。PTSDと同様に、ストレスとなった状況がよみがえるようになるフラッシュバックやストレスとなった状況を避けるといった症状が見られます。PTSDと酷似しますが、急性ストレス障害では感情に乏しさが見られる、ぼーっとするなど解離症状と呼ばれる症状が見られることが特徴です。また、急性ストレス障害は、急性とあるようにストレスとなった出来事から4週間以内に発症し、症状の持続期間も4週間以内であることが特徴です。ただし、急性ストレス障害において適切な治療をしない場合、PTSDへと移行する場合があります。何か強いストレスを受けた後に心身の体調が優れないといった場合には、お早めに当院までご相談ください。
急性ストレス障害の原因
急性ストレス障害の原因としては、命の危機を感じるような虐待や戦争、犯罪被害、自然災害などが挙げられます。また、こうした大きな心理的ストレスを経験したときだけでなく、目撃した場合も急性ストレス障害の原因となります。
急性ストレス障害の症状
急性ストレス障害の症状は、原因となる出来事を経験もしくは目撃してから4週間以内に発症するとされています。症状としては、PTSDと同様に、原因となった出来事を鮮明に思い出す(よみがえる)フラッシュバックや気分の落ち込み、悪夢を見るなどがあります。また、急性ストレス障害の特徴として、感情が乏しくなる、ぼーっとするなど解離症状と呼ばれる症状が見られることもあります。強いストレスを受けたような環境、場面を避ける、不眠、イライラする、光や音に過敏になる点こともあります。
急性ストレス障害の検査・診断
急性ストレス障害の検査・診断としては、問診が中心となります。症状だけでなく、生活環境など幅広くお話を伺うことで診断をしていきます。
急性ストレス障害の治療
急性ストレス障害の治療としては、症状に応じた薬物療法を行うとともに、安心できる環境づくり、周囲のサポート体制などを整えていきます。急性ストレス障害の場合、一時的な精神症状ですが、PTSDになると治療の長期化が予想されるため、PTSDになるリスクを軽減することも治療の一環として重要になります。
適応障害について
適応障害は、ストレスにより感情や行動が不安定となり、仕事や学校、家庭内に支障を来す疾患です。ストレスを取り除くこと、ストレスとうまく向き合うことで日常生活を取り戻せる疾患でもあります。適切な治療を受けることが重要です。
適応障害の原因
適応障害の原因として、ストレスが挙げられます。ストレスは、悲しいことなど悪いことだけでなく、就職や転職、結婚、出産など喜ばしいことも該当し、外から何らかの刺激があることすべてがストレスとなります。しかし、すべてのストレスが適応障害につながるわけではありません。天候などの外部刺激、病気や人間関係、睡眠状態など、様々な事象が絡み合うことで小さなストレスが大きなストレスへとつながり、適応障害になります。
適応障害の症状
適応障害の症状として、以前興味のあったこと(楽しかったこと)に興味を持てない(楽しめない)、イライラする、物事を悪い方に考えてしまう、抑うつ気分になる、不安になるといった症状があります。
適応障害の検査・診断
適応障害の検査・診断としては、問診が中心となります。ストレスとなった出来事、環境をお伺いするとともに、現在起きている症状についてもお伺いします。
適応障害の治療
適応障害の治療としては、ストレスの原因を取り除くことが挙げられます。必要に応じて休職や休学をお勧めすることもあります。患者様と周辺の環境を理解した上で、専門的な知識と経験豊富な医師が患者様に最適な環境調整を行っていきます。また、心理療法として認知行動療法を行うことがあります。適応できない環境などに対して、考え方や捉え方を柔軟にすることでうまく適応することができる場合もあります。